表彰式の様子

表彰式の様子

表彰式を、アルティショールーム(東京・南麻布)で開催

5月24日(水) アルティショールーム(東京・南麻布)で行われた表彰式および懇親会は、受賞者の皆様や関係各社等38名の方に参加いただき、盛大に執り行いました。当日は、受賞された皆様のプレゼンテーションと審査委員の講評を交えながら、作品を通してインテリア空間への理解が、より深まる有意義な時間となりました。

審査委員長 飯島直樹氏
このアワードは、対象が家具だけでなく、空間だけでもなく、両側からの視点を持ちながら、空間と家具の関係を読み解くという特殊な面があり、審査する側も普段のデザインアワードとは違う見方で審査をしています。
いろいろなアワードに携わる中で、応募作品の傾向も年々変化してきていると感じています。飲食施設の応募数の減少などは最近の傾向のひとつです。一方で大学や一部の介護施設などの空間では、今までとは違う概念でコモンスペース化した特徴的なデザインが見られることが多くなりました。例えば、先月オープンした「太田市美術館・図書館」(建築設計:平田晃久氏)では、人と環境のつながりをつくる豊かで新しい空間が生み出されています。このアワードにおいても、そうした特徴的な考え方をもった作品があり、興味深い審査となりました。

特別審査員 東利恵氏
今回初めての参加ですが、審査会では全員で様々な意見を交わしながら、自分とは違う視点での評価や意見に触れ、大変有意義でした。
私は8年間大学で住宅建築を学びましたが、その中で内装や家具についての勉強はわずかでした。仕事をはじめてから最初の10年はローコストの住宅ばかりで、その後リゾート関係の仕事をするようになり、「星のや」やその他の旅館などに携わるようになったり、最近では内装だけの仕事もさせていただくようになりました。それでも、どこか内部空間のデザインについては、自分の生活の見地からしているところがあり、内部空間のプロフェッショナルとして仕事をされている方の批評や、デザインの考え方、プレゼンテーションのあり方には大変興味を持っていました。このアワードに関わることで、自分自身もとてもいい勉強をさせていただいたと感じています。




グランプリ

作品名
チキンハウス テラスゲート土岐店
氏名
藤本 泰士 / 末木 なな子
会社名
(株) DESIGN STUDIO CROW
(藤本氏受賞コメント)
この度は、大変光栄な賞を頂きありがとうございました。この作品は、チキンハウスというレストランです。岐阜県は「恵那どり」の産地なんですが、全国的にはまだまだ知られていません。そこでクライアントである養鶏場の方から、恵那どりをもっとたくさんの人に楽しんで頂きたいとの想いをお聞きし、デザインをしました。店内のグラフィックや椅子の張り地、スクリーンや照明など、ひとつひとつが恵那どりからインスピレーションを受けて構成されています。
(飯島氏講評)
この空間は天井が高い。最近のショッピングセンター等は、天井が高くてデザインの仕方によっては閑散としてしまい、間延びしたような事例を良く見かける。4.5mという天井高は、そういう意味で良さでもあるが、危険性もある。加えて、両側の壁面がガラス面になっているので、内部空間を構築するよりどころがあまり無い。要するにこの作品は、前提となる条件があまり良くないにもかかわらず、上手くデザインされています。
さらに、この作品の面白さは、絵画的な手法にあります。まるでジャクソン・ポロック(アメリカの画家)のドリッピング(絵の具を筆に浸して、垂らしたり投げつけたりする画法)で、赤と黒と木の色の絵の具をまぶしたかのような色彩を構成しています。しかも絵画とは違う空間という立体の中で、垂直面、水平面を上手くコラージュし、それぞれの要素が発する情報をシンクロさせながら、活き活きと表現しています。
椅子は、座面を赤くしただけとも言えるが、このシンプルな手法が、他のエレメントと呼応しながら絶妙な効果を生み出しています。家具が空間に対して非常に重要な影響を及ぼしているという意味において、今回のグランプリに相応しい優れたデザインであると判断しました。



1位

作品名
GOODLIFE office. Shibuya
氏名
関 洋
会社名
SEKI DESIGN STUDIO
(関氏受賞コメント)
この作品は、クライアントであるGOODLIFEという不動産投資で人の暮らしをサポートする会社のオフィスです。まずポイントになるのはロゴマークですが、これはグラフィックデザイナー佐藤卓氏によるデザインです。未来へ広がり、繋がり、発展していくイメージを表現したマークです。そのロゴに込められた会社のアイデンティティを空間全体から発するようなデザインを試みました。ロゴマークをあしらった床は、特注のパーケットフローリングです。八方向への「広がり」を形にした八角形の「大黒柱」により、GOODLIFEが人を「支える」という意味を持たせています。セミナーやミーティングなど多目的に使用するスペースである為、家具は使用者がそれぞれの使い方に合わせて自由に動かせるよう、軽くて機能的な椅子とテーブルを選びました。会社のアイデンティティと機能美の結びつきを考慮し、家具を後からコーディネートするのではなく、最初から空間と家具を融合させながらデザインしました。
(平田氏講評)
この作品は、一見すごくさり気無いんですが、非常によく考えられた高度なデザインです。空間に墨を垂らして滲ませるような、空間の中に溶けていくような、ある種、日本的といえる場の捉え方を感じます。家具を置いたら場が発生するということはよくありますが、そこをもっと突っ込んで、家具だけでなく、床の素材が柱と同じ色で溶けて広がっているような不思議さがアイデアとして明快です。また、正面の壁は、白くシンプルに表現され、特徴的な床とバランスよく構成されています。空間全体の中で家具の密度が低い為、ぽつぽつと寂しくなりがちなところを、床のデザインにより、人がいるときでも、いないときでも、ある種の「賑わい」を生み出しています。饒舌すぎず、独特なデザインセンスで、空間と家具の関係を表現した優れた作品です。



2位

作品名
ヤフー株式会社 社員レストラン -BASE11-
氏名
高橋 慎
会社名
Specialnormal Inc.
(高橋氏受賞コメント)
この作品は、ヤフーの新しいプロジェクトの中で、1回で約1000人の社員が同時利用するオフィスのレストランとして計画されました。ランチタイムに使用する社食としての機能を有しながら、アイドルタイムにも、社員同士が様々な使い方ができるように、ひとつの空間にいろんなエリアを設けました。様々な用途を想定しながらも、使う人自身が使い方を生み出していけるような広がりを感じさせながら、隣り合うエリアが緩やかに繋がっている居心地の良さをデザインしています。
(東氏講評)
私自身が設計をする上で難しそうだと感じていて、やったことがないのが大きなオフィスビルで、やってみていつも大変だと思うのは、ある規模を超えたレストランです。この作品は、その両方が重なっていて、しかも1000人という規模はレストランの枠を超えたスケール感を持ちながら、天井高など躯体のラインや空調等の設備も決まっている中で、1フロアをいろんなエリアに作り上げているデザインの楽しさが存分に感じられました。
この場所を様々な人が、様々に過ごし、食べるとか、仕事をするとか、リフレッシュするとか、そういうワークスタイルのあり方みたいなものが、ヤフーという会社の持つイメージと相まって、それが上手くデザインとして空間に表現されています。



3位
作品名
福寿堂 功
氏名
高橋 正治
会社名
(有)スマイルスタジオ
(高橋氏受賞コメント)
この作品は、寿司割烹店のインテリアです。檜の一枚板のカウンターを介して、特別な料理とサービスと空間をシンプルに演出していきたいという要望から生まれた空間です。闇の中に檜の一枚板が浮かんで現れる様子をイメージしながら、この贅沢なカウンターが特別なゲストと料理人をつなぐ役割を果たすことができるような空間の素材、照明計画、家具そしてプランをデザインしました。
(飯島氏講評)
この作品はカウンター割烹として、程よい長さのセオリーをおさえたデザインです。そしてカウンター天板の檜は絶対的な主役であり、そういう特別な意味合いを持つ空間のしつらえとして、椅子が絶妙な選び方をされています。カウンター天板との関係が、あと数センチ高くても低くても成り立たないという、まず根底にある高さの問題を確実にクリアしながら、空間の主役を引き立てる椅子として明快に役割を果たしているバランスがすばらしい作品です。

部門賞の受賞者の皆様

入賞の受賞者の皆様

表彰式後に行われた懇親会の様子

表彰式の後は、受賞者の皆様、審査委員の皆様と懇親会を行いました。
貴重なお話を伺ったり、楽しい歓談の時間を過ごすことができました。
ご参加いただいた皆様に心よりお礼申し上げます。

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