表彰式を、アルティショールーム(東京・南麻布)で開催
12月21日(水)アルティショールーム(東京都港区南麻布四丁目11番30号)で第11回スペースデザインアワードの表彰式、及び懇親会を開催しました。当日は受賞者の皆様、総勢30名の方々にご参加いただき、盛大に執り行われました。表彰式では、受賞された皆様のプレゼンテーションと審査員の講評を交えながら、未来の空間デザインの指標となる、可能性あふれる作品をご披露させていただきました。
主催者代表 大嶋秀紀
スペースデザインアワードは今回で11回目を迎えることとなりました。今回は2019年8月に募集を開始した後、コロナ感染が拡大し、人の動きが厳しく制限される中、募集期間を2回にわたって延期することを余儀なくされました。9月28日(水)に審査会を開き、応募総数265作品を厳正に審査させていただきました。ご応募いただいた皆様には相当長い間、お待たせしてしまったことをお詫びさせていただきます。また、新しく特別審査員として橋本夕紀夫氏をお招きし、審査・表彰にご出席いただく予定をしておりましたが、残念ながら3月に急逝されました。そのような中で、本日表彰式を迎えられたことに大変感謝しております。本日は単に表彰式ということだけでなく、受賞者、審査員の皆様同士の交流を深める機会にしていただくことが、本アワードの目的でもあります。今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
審査委員長 飯島直樹氏
このアワードは募集から審査まで大変長くの時間を要しました。コロナ感染拡大や、橋本夕紀夫氏の急逝などを受け止めながら、ようやく審査会に辿り着くことが出来ました。審査に当たっては、審査員同士の意見がぶつかることもあり、協議を重ねた結果、本日表彰させていただくこととなりました。当アワードは、一般的な空間デザインのアワードとは一線を画し、家具というものを軸に据えながら、家具と空間の関係を重視しております。今回のテーマは「うながす」でありますが、家具によってうながされる空間の在り様を審査させていただきました。空間デザインのもう一つの側面として、家具を踏まえた空間デザインを審査するという点で、他にはない特徴あふれる作品が受賞となっております。
グランプリ
作品名 ReBar
氏名 熊木 英雄
会社名 Organic Design inc.
作品名 ReBar
氏名 熊木 英雄
会社名 Organic Design inc.
(熊木氏受賞コメント)
「ReBar」の空間はオフィス用途ということもあり、抽象的な空間の仕切り方として、光と風の入れ方は勿論のこと、組織心理的に発展的な場になることなどを考慮し、空間から知的躍動感があふれ出す、「促される」仕切りを追い求めました。モチベーションを伝える鉄筋の壁が、ひいてはグループ全体の一体感を育み知的生産性を上げることができるきっかけ的な空間になればと思い設計しました。出来上がってみると設計者が思いも寄らない使い方をして下さることも時々あり、ミュージックビデオの背景など私の想像を超えた使い方をしてくれて空間がもたらしてくれた化学変化を楽しむばかりです。
この受賞を励みにオフィスから店舗・飲食店など、感覚的に楽しく感じられ、効果をもたらす場づくりを一層目指していきます。
「ReBar」の空間はオフィス用途ということもあり、抽象的な空間の仕切り方として、光と風の入れ方は勿論のこと、組織心理的に発展的な場になることなどを考慮し、空間から知的躍動感があふれ出す、「促される」仕切りを追い求めました。モチベーションを伝える鉄筋の壁が、ひいてはグループ全体の一体感を育み知的生産性を上げることができるきっかけ的な空間になればと思い設計しました。出来上がってみると設計者が思いも寄らない使い方をして下さることも時々あり、ミュージックビデオの背景など私の想像を超えた使い方をしてくれて空間がもたらしてくれた化学変化を楽しむばかりです。
この受賞を励みにオフィスから店舗・飲食店など、感覚的に楽しく感じられ、効果をもたらす場づくりを一層目指していきます。
(飯島氏講評)
ローコストという条件の下、最低限の要素だけで、なおかつこの不思議な空間をしつらえていることが、グランプリとなった要因です。今回の審査では、グランプリ、1位、2位共に「表層(スキン)」が共通のモチーフとなっています。表層の在り方、追いかけ方はそれぞれ異なりますが、この「ReBar」においては、鉄筋によるダブルスキンのグリッドで被膜が作られています。今回、グランプリ作品と1位作品は評価が拮抗しておりましたが、空間が感覚的な流動性を持っていること、リアルな建築空間の中にイリュージョナルな要素を持っていること、ブルーの壁、メッシュの鉄筋、ブルーのチェア、そして唐突に出てくる赤色や黄色のカーテンという、最低限の素材からコラージュ・スーパーインポーズのように作られた独特の異化空間のようなところがあり、今の時代の新しさを期待させてくれたことがグランプリの決め手となりました。大変面白いデザインを提示してくれたことに感謝をします。
ローコストという条件の下、最低限の要素だけで、なおかつこの不思議な空間をしつらえていることが、グランプリとなった要因です。今回の審査では、グランプリ、1位、2位共に「表層(スキン)」が共通のモチーフとなっています。表層の在り方、追いかけ方はそれぞれ異なりますが、この「ReBar」においては、鉄筋によるダブルスキンのグリッドで被膜が作られています。今回、グランプリ作品と1位作品は評価が拮抗しておりましたが、空間が感覚的な流動性を持っていること、リアルな建築空間の中にイリュージョナルな要素を持っていること、ブルーの壁、メッシュの鉄筋、ブルーのチェア、そして唐突に出てくる赤色や黄色のカーテンという、最低限の素材からコラージュ・スーパーインポーズのように作られた独特の異化空間のようなところがあり、今の時代の新しさを期待させてくれたことがグランプリの決め手となりました。大変面白いデザインを提示してくれたことに感謝をします。
1位
作品名 松尾学院 東進衛星予備校 高速長田校
氏名 松本 哲哉 / Farid Ziani / 入山 理沙
会社名 KTXアーキラボ / マツヤアートワークス
作品名 松尾学院 東進衛星予備校 高速長田校
氏名 松本 哲哉 / Farid Ziani / 入山 理沙
会社名 KTXアーキラボ / マツヤアートワークス
(松本氏受賞コメント)
この作品は、ご覧の通り空間としては壁も天井も何もかも真っ白に塗り上げたところに、黒皮鉄の鉄板を置いたものです。黒皮鉄の存在感が空間の一番大事な要素です。この黒皮鉄の存在感を邪魔せずに、なおかつエレガントな印象を受け入れてくれる椅子ということでラスパを選びました。黒皮鉄の存在感を消すことなく、椅子が主張しすぎることなく、カッコいい空間に仕上げることが出来ました。
この作品は、ご覧の通り空間としては壁も天井も何もかも真っ白に塗り上げたところに、黒皮鉄の鉄板を置いたものです。黒皮鉄の存在感が空間の一番大事な要素です。この黒皮鉄の存在感を邪魔せずに、なおかつエレガントな印象を受け入れてくれる椅子ということでラスパを選びました。黒皮鉄の存在感を消すことなく、椅子が主張しすぎることなく、カッコいい空間に仕上げることが出来ました。
(平田氏講評)
今回の応募作品は、コロナ禍で難しい状況でありましたが、クオリティの高い作品が多く集まりました。その中でも特に惹かれたのは、グランプリと1位の二作品でした。その要因を一言で表すと「透明感」です。空間、場所が流動的に広がっている雰囲気がいずれの作品にも共通して存在していました。この1位作品の素晴らしいと思ったところは、黒皮鉄のムラのある表情を大事にされていて、そこに光が当たることで、光のムラと黒皮鉄のムラが相まって、空間全体がまるで水墨画の薄墨で描くようなグラデーションに仕上がっていることです。また、松本氏が意図された通り、椅子が空間の大きな流れを決して邪魔することなく、自然に馴染んでいる印象を与えているところに、とても魅力を感じました。
今回の応募作品は、コロナ禍で難しい状況でありましたが、クオリティの高い作品が多く集まりました。その中でも特に惹かれたのは、グランプリと1位の二作品でした。その要因を一言で表すと「透明感」です。空間、場所が流動的に広がっている雰囲気がいずれの作品にも共通して存在していました。この1位作品の素晴らしいと思ったところは、黒皮鉄のムラのある表情を大事にされていて、そこに光が当たることで、光のムラと黒皮鉄のムラが相まって、空間全体がまるで水墨画の薄墨で描くようなグラデーションに仕上がっていることです。また、松本氏が意図された通り、椅子が空間の大きな流れを決して邪魔することなく、自然に馴染んでいる印象を与えているところに、とても魅力を感じました。
2位
作品名 ぬる燗佐藤ヒカリエ
氏名 田中 亮平
会社名 G ARCHITECTS STUDIO
作品名 ぬる燗佐藤ヒカリエ
氏名 田中 亮平
会社名 G ARCHITECTS STUDIO
(田中氏受賞コメント)
この作品のポイントは、天井の格子です。実はこのお店自体は、居抜き物件でして、お店の奥にある厨房をはじめ壁や天井も、前の物件のものを殆ど流用しつつ、中心にドリンクカウンターを配置しました。このお店の売りは、店名「ぬる燗佐藤」のとおり、ぬる燗をはじめ日本酒を好みの温度で提供することで、ドリンクカウンターはその象徴です。天井の格子は、消防法の関係で既設のスプリンクラーヘッドや散水軌跡をうまく避けながら折り下げ範囲やグリッドを決定したところ、うまくはまりました。椅子はどちらかと言えば、黒色の壁の影になりつつ映えるものを選びました。エレガントな食空間を実現するために、エリアごとにartiブランドの椅子、CRESブランドの椅子を使い分けています。
この作品のポイントは、天井の格子です。実はこのお店自体は、居抜き物件でして、お店の奥にある厨房をはじめ壁や天井も、前の物件のものを殆ど流用しつつ、中心にドリンクカウンターを配置しました。このお店の売りは、店名「ぬる燗佐藤」のとおり、ぬる燗をはじめ日本酒を好みの温度で提供することで、ドリンクカウンターはその象徴です。天井の格子は、消防法の関係で既設のスプリンクラーヘッドや散水軌跡をうまく避けながら折り下げ範囲やグリッドを決定したところ、うまくはまりました。椅子はどちらかと言えば、黒色の壁の影になりつつ映えるものを選びました。エレガントな食空間を実現するために、エリアごとにartiブランドの椅子、CRESブランドの椅子を使い分けています。
(東氏講評)
この作品は王道の飲食店舗です。最近では大型商業空間の中に間口を大きく取った設計を様々なところで目にするようになりましたが、この店舗では全面に開放しながら、暖簾を下げることで空間のレイヤーを作り出しています。店舗の外から眺めると街中の立ち飲み屋さんの雰囲気が醸し出されていて、まるで巨大スクリーンに立ち寄っている人たちの風景が映し出されていて、彼らの日常生活が見えてくるような面白さを感じます。また、全体的な評価としては、天井の格子が秀逸で、格子の強さが上手に表現されていること、微妙なくねらせ方もとても美しいことが大きなポイントです。限られた空間の中で、個性が出しづらい飲食店舗の中で、一つのちょっとした気付きのようなものから表現されたデザインが、空間全体を上手にまとめている点が素敵です。
この作品は王道の飲食店舗です。最近では大型商業空間の中に間口を大きく取った設計を様々なところで目にするようになりましたが、この店舗では全面に開放しながら、暖簾を下げることで空間のレイヤーを作り出しています。店舗の外から眺めると街中の立ち飲み屋さんの雰囲気が醸し出されていて、まるで巨大スクリーンに立ち寄っている人たちの風景が映し出されていて、彼らの日常生活が見えてくるような面白さを感じます。また、全体的な評価としては、天井の格子が秀逸で、格子の強さが上手に表現されていること、微妙なくねらせ方もとても美しいことが大きなポイントです。限られた空間の中で、個性が出しづらい飲食店舗の中で、一つのちょっとした気付きのようなものから表現されたデザインが、空間全体を上手にまとめている点が素敵です。
3位
作品名 IL FUGO
氏名 田中 伸明 / 梶浦 暁
会社名 STUDIO NINÉ / 梶浦暁建築設計事務所
作品名 IL FUGO
氏名 田中 伸明 / 梶浦 暁
会社名 STUDIO NINÉ / 梶浦暁建築設計事務所
(田中氏受賞コメント)
この物件はビルの地下にある小さなテナントスペースで、わずか10席のイタリアンレストランです。特徴は何といっても「斜め」の形。これは狭いスペースの中で、各場所の納まりや取り合いを極力小さくし、場所と場所を直線で繋いだ結果です。天井でいえば、テナントスペースの梁をぎりぎり避けたら斜めになり、右壁はダクトをぎりぎり収めたら斜めになり、左厨房の壁は油の飛び跳ねを避ける形が斜めになりました。照明もカウンター席に向けて斜めに配し照らしています。椅子と今回のテーマ「うながす」についてお話させていただきます。椅子を選ぶタイミングは、空間を設計し終えた後が一般的ですが、設計の始めの段階で椅子が具える要素を空間のデザインに取り込めないかと思いました。つまりそれは、多くに共通する機能性・快適性の現れ、背もたれや脚や座面がもつ斜めの形。こうしたアプローチにおいて、椅子の形にうながされて出来上がった空間でもあるのです。
この物件はビルの地下にある小さなテナントスペースで、わずか10席のイタリアンレストランです。特徴は何といっても「斜め」の形。これは狭いスペースの中で、各場所の納まりや取り合いを極力小さくし、場所と場所を直線で繋いだ結果です。天井でいえば、テナントスペースの梁をぎりぎり避けたら斜めになり、右壁はダクトをぎりぎり収めたら斜めになり、左厨房の壁は油の飛び跳ねを避ける形が斜めになりました。照明もカウンター席に向けて斜めに配し照らしています。椅子と今回のテーマ「うながす」についてお話させていただきます。椅子を選ぶタイミングは、空間を設計し終えた後が一般的ですが、設計の始めの段階で椅子が具える要素を空間のデザインに取り込めないかと思いました。つまりそれは、多くに共通する機能性・快適性の現れ、背もたれや脚や座面がもつ斜めの形。こうしたアプローチにおいて、椅子の形にうながされて出来上がった空間でもあるのです。
(飯島氏講評)
斜めの形は、審査の中で目に留まりました。この斜めの形というのは私の世代にとっても、いい思い出も苦い思い出もあります。そういう意味でも久しぶりだと感じました。現代の空間の価値観は、垂直水平で構成され、出来る限りさりげなさを追求する定形的なものに対して、斜めという不定形なものを追求してくれたことを嬉しく思います。それから椅子という、きわめて形式的な存在に対して、田中氏の椅子の背が斜めであるという発見が面白く、確かに椅子の背が持つ斜めの面に呼応して斜めの空間を作られたというお話は、まさに今回のテーマである「うながす」を象徴するデザインだと感じました。
斜めの形は、審査の中で目に留まりました。この斜めの形というのは私の世代にとっても、いい思い出も苦い思い出もあります。そういう意味でも久しぶりだと感じました。現代の空間の価値観は、垂直水平で構成され、出来る限りさりげなさを追求する定形的なものに対して、斜めという不定形なものを追求してくれたことを嬉しく思います。それから椅子という、きわめて形式的な存在に対して、田中氏の椅子の背が斜めであるという発見が面白く、確かに椅子の背が持つ斜めの面に呼応して斜めの空間を作られたというお話は、まさに今回のテーマである「うながす」を象徴するデザインだと感じました。
【グランプリ】
Organic Design Inc. | 熊木英雄氏 眞木励氏 |
株式会社リソーコ | 池田浩大氏 |
【1位】
KTXアーキラボ/マツヤアートワークス | 松本哲哉氏 |
【2位】
G ARCHITECTS STUDIO | 田中亮平氏 西村和起氏 |
【3位】
STUDIO NINÉ | スタジオ・ニーネ | 田中伸明氏 |
梶浦暁建築設計事務所 | 梶浦暁氏 |
【部門賞】
株式会社スペースカウボーイ | 中島崇行氏 |
株式会社アール・アイ・エー | 有木陽一氏 |
有限会社スマイルスタジオ | 高橋正治氏 |
株式会社アラキ+ササキアーキテクツ | 佐々木高之氏 河埜智子氏 青木昴志良氏 | 佐々木高之氏 河埜智子氏 青木昴志良氏 |
タカトタマガミデザイン株式会社 | 玉上貴人氏 山田海氏 濵﨑優子氏 山川七海氏 | 玉上貴人氏 山田海氏 濵﨑優子氏 山川七海氏 |
株式会社乃村工藝社 | 佐藤友哉氏 |
【入賞】
株式会社ARTS | 前田太志氏 |
有限会社スマイルスタジオ | 高橋正治氏 |
株式会社KADO一級建築士事務所 | 笠松豊氏 |
有限会社高階澄人建築事務所 | 高階澄人氏 古川祥子氏 |
タカトタマガミデザイン株式会社 | 玉上貴人氏 山田海氏 濵﨑優子氏 山川七海氏 | 玉上貴人氏 山田海氏 濵﨑優子氏 山川七海氏 |
株式会社隈研吾建築都市設計事務所 | 尾道理氏 小林章太氏 |
清水建設株式会社 | 松林好英氏 |
表彰式の後は、受賞者の皆様、審査委員の皆様と懇親会を行いました。貴重なお話を伺ったり、楽しい歓談の時間を過ごすことができました。
ご参加いただいた皆様に心よりお礼申し上げます。
ご参加いただいた皆様に心よりお礼申し上げます。
表彰式後に行われた懇親会の様子